埼玉県が海開き宣言 ついに海水浴場がオープン


埼玉県大宮市に25日、県営の「大宮海水浴場」がオープンした。埼玉県内では初。同海水浴場のある大宮市中心部のビルで行われたオープニング式典では、上 田照夫埼玉県知事自ら「海開き」を宣言。「埼玉の海で夏を楽しんでほしい」と演説した。全国で最も遅い8月下旬の海開きだが、詰めかけた利用客およそ一万 人は大いに盛り上がった。

大宮海水浴場は、全国で初めてとなる「空想式海水浴場」。実際には海水の無い場所で水着に着替え、目をつむりな がら「海で泳ぐ自分の姿」を想像して楽しむというもの。昨夏、埼玉県庁の職員がニュースに映る他県の海開きニュースに嫉妬して発案し、「埼玉県の新たな観 光資源になる」と知事が着目。商業利用へ向けて土地の確保など一年がかりの準備が進められてきた。生後間もない乳幼児からお年寄りまで安全に泳げるだけで なく、現実の海水浴場のように海水が必要ないこと、設置と撤去が容易なことなどから、将来の高いビジネスモデルとして注目を浴びている。海を見たことのある県民人口が年々減り続ける埼玉県にとって、回復の起爆剤となりそうだ。

大宮海水浴場は、設置場所としてJR大宮駅前にある昨年末に閉店 した元百貨店ビルを利用。一階エントランスに遊泳可能部分を示すブルーシートを敷いたほか、「埼玉県よ、これが海だ」や「ついに海がやってきた」などと書 かれた立て札を設置。ビーチパラソルや、有志による海の家も営業するなど「本物の海そのものの雰囲気」(準備にあたった県庁職員)を演出している。

オー プン初日は、県内外から一万人あまりが訪れた。利用客は、係員の呼びかけで一斉に目を閉じると「空想」を開始。しばらくして「トランス」と呼ばれる「海で 泳ぐ自分をうまく想像できた状態」になると、あちこちから笑い声があがった。川越市の男性(94)は、戦時中に出兵したフィリピンで体験して以来となる海に「あの日見た海と変わらない。それに、海ができたことで埼玉も東京と肩をならべられてうれしい」と話した。会場には埼玉県民以外の姿も見られ、放射能へ の恐れから今年は海水浴場に行くことをためらっていたという愛知県在住の男性(31)は「大宮なら安心して家族と泳げますね。ここは電源もあるから、次回 はパソコンを持ってきて嫁と楽しみたい」と環境に満足していた。

埼玉県は「空想式海水浴場」の特許を申請中で、観光資源化に期待を寄せる。利用客の上場の反応を受け、今後は山梨県や長野県など「海なし県」に売り込みたい考えだ。オープン初日となったこの日は、滋賀県を除く「海なし県」職 員が集結して熱心にメモを取る姿も見られた。滋賀県は琵琶湖を海水浴場として使用しているため不参加となった。

大宮海水浴場はシーズンに関係なく、通年営業していく方針。全国の多くの海水浴場が今月中で営業を終えるのに対し、残暑が続くこれからの集客を目指す。会場への入場は無料だが、遊泳する 場合は料金として一人500円(支払から一日有効)が必要。会場内で目を閉じた時点で遊泳とみなされるという。