60年前のバレンタインカード 岡山で


14日、バレンタインデーにふさわしいニュースが起きた。岡山県に住む女性、大橋千枝さん(78)の元恋人だったイギリス人捕虜の兵士が送った”バレンタインカード”が、60年ぶりに発見され千枝さんの許へ届けられたのだ。千枝さんは「60年も昔、バレンタインの習慣なんて日本に無かった。でも、今は彼の気持ちを受け止めることが出来ました」と語った。

61年前(1944年)の太平洋戦争末期、日本帝国陸軍の捕虜となっていたイギリス人兵士、ポール・べックハムさん(当時29)は岡山県の施設に収容されていた。また、当時18歳であった千枝さんは学徒動員の一環により同施設に配置されていた。戦闘で負傷していたポールさんの担当医の助手を務めていたのが千枝さんで、このことがきっかけで二人は出逢ったのだという。

「互 いに惹かれた」(千枝さん談)という二人は密会を重ねたが、関係に気が付いた施設職員により「陰湿な虐め」を受けた千枝さんは次第にポールさんとの距離を 置くようになる。そして、出会ってから11ヵ月後の1945年8月に日本は降伏し、ポールさんは本国イギリスへ帰国、二人は遠く離れることとなった。

その後、千枝さんは日本人男性と結婚。8人の子宝に恵まれ、現在では17人の孫も誕生した生活を送っていたが、今日、自宅に一本の電話があった。「岡山県文化資料館」という所からのもので、戦時中の外国人捕虜の資料の中にポールさんの書いた千枝さん宛ての”バレンタインカード”が発見されたという。先月3日に発見されていたカードは、懸命な宛て先探しの結果みごとに千枝さんの許に届いたのだ。

欧米のバレンタインデーでも贈り物は習慣。男性から女性へ贈る場合もあり、ポールさんは千枝さんへ宛ててカード(手紙)を書いたが、管理官によって没収され、60年ものあいだ決して贈られることは無かったのだった。

イギリスへ帰国後のポールさんの消息は不明だが、千枝さんにとってこのカードは一生の思い出となったと言う。

「内容?恥ずかしくて言えませんよ」

千枝さんは顔を赤らめてこう言った。