美術公募展、象のサチ子が繰り上げ最優秀賞


写真=受賞取り消しとなった「慟哭」と繰り上げ受賞の「業」

写真=受賞取り消しとなった「慟哭」と繰り上げ受賞の「業」

国内最大規模の公募展「日本美術博覧会」を主催する日博は、今年のコンクールで最優秀賞となった作品について、受賞を取り消すことを決めた。審査の過程で金銭や物品の授受があったとしている。

受賞取り消しとなった作品は、東京都内の霊長類実験施設で飼育されているチンパンジーのモモ(オス、5歳)が描いた「慟哭」。檻の隙間から見えるサザンカの花がモチーフで、先月から国立現代美術館で展示されていた。

日博によると、日展の入選者割り振り疑惑が報道されたことを受けて内部調査したところ、霊長類実験施設から審査員に対して現金15億円、大量のバナナ、モモとの触れ合い無料券が贈られていたことが判明したという。

これを受けて対応を協議していた日博は、モモの受賞を取り消すとともに、次点だった象のサチ子(上野動物園、メス、21歳)を繰り上げ最優秀賞とすることを決めた。サチ子の作品は人間の醜さをモチーフにした水彩画「業(ごう)」で、自慢の鼻にくくりつけた絵筆による画風は「力強さと繊細さの融合した筆致が魅力」と評された。

日博では、霊長類実験施設から応募された作品1万点あまりで同様の授受が認められたため、すべて失格とする方針。森本理事長は失格作品を処分する意向を示しているが、その方法については「今年の冬は暖炉の薪を心配しなくてもよさそうだ」と述べるに留まった。