多摩川のアザラシを逮捕 生活保護を不正受給
十分な所得がありながら生活保護費を不正受給していたとして、横浜警察署は20日、長年にわたって「タマちゃん」の愛称で親しまれてきたアゴヒゲアザラシを詐欺容疑で逮捕した。04年に交付された横浜市の住民票を悪用したと見られる。
横浜市生活福祉課の関係者への取材でわかった。それによると、タマちゃんこと本名・西玉夫(住所不定無職、54)容疑者は05年から今年8月までの8年間、総額3000万円あまりの生活保護費を得ていた疑いがもたれている。
西容疑者は05年、自ら市役所を訪れて生活保護を申請。当時、窓口で対応した職員によると「ブームが去って収入の当てがなくなり、生まれ故郷のアラスカにも身寄りがない。助けてほしい」などと話したという。
しかし実際は「タマちゃんブーム」の関連商品で得た1億円近い資産のほか、現在もFX取り引きによる定期的な収入があった。市と警察では30回にわたり返金を求めたが応じなかったため、「非常に悪質」(警察筋)と判断、逮捕に踏み切った。
市によると、西容疑者は住民登録後の市民税など数百万円分も滞納。これらについても速やかな納税を求めている。調べに対し西容疑者は「頼まれもしないのにマスコットに祭り上げられて連日フル回転したので、市にはこれくらい認めてほしい。当時、多摩川の水を『タマちゃん水』として売り出したのはどこの誰だったか」と開き直る発言を繰り返しているという。
住民票の交付に詳しい熊本大学地域振興学部の小山燻堂教授は、「勢いとノリだけでゆるキャラを作って住民票を出す自治体が、生活保護や税金について深く考えているとは思えない。同様の問題は今後も全国で起こるだろう」と指摘した。