「いかに真面目に味気ない文章を書くか」 卒業文集代筆業の実態とは
卒業式が各地で開催される3月、近年誕生したサービス「卒業文集代筆業」が人気だ。いち早くこのサービスを始めたフリーライターの飯田順平さんは、すでに3年先の卒業文集まで予約が埋まっているという。その業務の実態を探るため、都内の事務所を訪ねた。
―「卒業文集代筆業」とは具体的になにをするのでしょう?
そ の名の通り、卒業文集を代筆する仕事です。逮捕されると、マスコミがどこからか入手した卒業文集をテレビやなんかで晒すでしょう?そこに少しでも問題があ りそうな文章があれば、一斉に叩かれるのは間違いない。それでなくても、趣味のことを書いただけで「暗い」とか「やっぱり」「こういうこと書く子は危な い」とかね。それに備えて、当たり障りのない文集用の文章を書きます。
―ニーズはあるのでしょうか?
とてもありますよ。「将来、犯罪を起こした時のために真面目なつまらない文章を書いてください」という子どもからの依頼が多いですね。クラス全員分を代筆して、文集が僕の作品集になったこともありました(笑)。
最近は、中二病患者の親御さんからの依頼も増えてきましたよ。中二が書いた「聖なる暗黒騎士」とかそういう単語の入った文集をよその家庭に見せたくないんでしょう。
―気になるお値段は?
安いですよ。薄利多売っていうのかな。依頼者に学生さんが多いっていうのもあります。大体、卒業文集なら1ページで5000円くらいです。一言メッセージなら500円からやってますね。
―代筆するときに気を付けていることは?
一番はやっぱり、限りなくまじめに、何でもないようなことを味気なく書くことです。
それと…あらかじめ決めているNGワードを使わないことですね。「殺」「罪」などの字を使わないのはもちろんですが、よくネットの犯罪予告で使われる「炎」「小女子」「学校」も使えません。だからキャンプファイヤーの思い出なんかは書けないですね。
―苦労が多いんですね。
まあ、仕事ですから(苦笑)。この仕事を始めたのは2年前からなんですが、今では日本全国から注文があります。「逮捕されて文集が晒されたが、あなたのお陰で恥ずかしい思いをせずに済んだ」というようなお便りをもらうこともあって、そういう瞬間は代筆冥利に尽きますね。
―今後の展望をお聞かせください。
代 筆ってまだまだ可能性があると思うんです。例えばSNS代筆業とか。「フェイスブックやツイッターに登録したはいいが、投稿することが無い」、そんなユー ザーに向けて、充実した日常を過ごしているように見える写真を撮ったり日記を代筆するサービスはどうでしょう。あと、新聞記事の代筆とか?なんでも書きま すよ。
一見するとギリシャ彫刻のような精悍な顔立ちに、美しいバリトンで話す飯田さん。以前は卒業写真に代わりに写る卒業写真代行モデルだった、という経歴にも納得だ。
インタビューは10分間にわたり、飯田さんの人柄もあって終始和やかな雰囲気で行われた。底知れない魅力を持つ飯田さんの今後から目が離せない。
※この記事は飯田さんによる新聞記事代筆サービスによって作成されました。