五輪トライアスロン、1位2位が手をつないでゴールし失格


30日行われた男子トライアスロン決勝で、上位を走る2選手が手をつないで同着ゴールしたことが「五輪精神に反する」として、両選手とも失格となった。この結果、3着でゴールしたギリシャ代表グレゴリウス・アレクトマニス(28)が金メダルに輝いた。

失格となったのは、アメリカ代表のフィリップ・スキナー(29)とフランス代表のティエリ・ストーン(26)。ともに五輪前の大会で好タイムを残すなど、今大会の優勝候補として注目されていた。問題とされる行為は、トライアスロンの最終種目「長距離走」でのこと。それまで熾烈な1位争いをしていた両選手だが、ゴール手前200mでストーンが失速、ついには膝をついてしまった。すると、それを見たスキナーが走り寄って手を差し伸べ、二人は一緒に走りだしたという。

両選手はそのまま手をつなぎ、歩幅も合わせて並走。「二人三脚のような様子」(目撃者・談)でゴールまで進み、ビデオ判定もできないほど一致したタイミングでテープを切った。そのハートウォーミングな光景に、ゴール地点の一部からは大きな歓声が上がったという。だが別名「鉄人レース」と呼ばれるトライアスロンの熱闘を期待して集まった多くの観衆は対応に戸惑い、まばらな拍手に終始したとのこと。

レース後、スキナーとストーンの同着金メダルとなった最終順位を大会委員会が問題視。「競い合う、スポーツとしての性質を無視したレース結果は五輪の精神に反する」と判断し、両選手の失格と、3位だったアレクトマニスの繰り上げ金メダルを決定した。これに対して両選手は「手をつないだのは、五輪憲章に掲げられた『スポーツを通じた平和と友好』を体現したまでだ。争いはやめよう。順位付けなどいじめの温床」と抗議している。

近代五輪とオリンピズムに詳しい鷹の台産業大学身体文化研究室の中村審一郎教授は、「順位をつけない最近の日本の運動会じゃあるまいし、大会委員会は妥当な判断だろう。失格という毅然とした判断が無ければ、全員が横一列で手をつないだ陸上100m決勝が今後起こる可能性があった。もっとも、ボルトはそんな空気読まないと思うけど」と話した。