マジック・マン 沈黙する謎のマジシャン


先月初め、イギリス・ハンクオークの海岸で「天才的な」腕を持つマジシャンが保護されたとして話題となっている。

先月6日、ずぶ濡れのタキシード姿で海岸をさまよっていた、20~30代の白人男性が保護された。最初に発見した画家のクレイトン・ロースン氏は名前や身元などを聞き出そうとしたが、男は一言も喋ろうとしなかった。

そこで、病院にて筆談を行うためにペンと紙を渡したところ、絵を描いた。言葉は発せず、描き終わった後は何かに怯えるように再び黙り込んでしまったと言う。こうした行動から、記憶喪失が疑われている。(写真は、絵の1枚)

写真=鳩を出すマジシャンを描いている

写真=鳩を出すマジシャンを描いている

その絵は、手許に鳥を持った人物と、トランプ。病院職員がそれらを「スポットライトを浴びて鳩を出すマジシャン」と「カードマジックのトランプ」と推測し、男にゲーム用のトランプを渡した。すると、男は「猛烈な勢いで」トランプをシャッフルし、続けてマジックをはじめたのである。

神秘の指先

「驚 きました。カードを10枚ほど片手で持つと、一瞬で消すんです。すると、次の瞬間には反対側の手に広がっている…。一週間、彼は無言のままカードを消しま くりました。もちろん出しまくったとも言えるのですが。2週間目、我々は彼にコインを渡してみました。すると、今度はカードと組み合わせてコインの移動現 象を無言で演じ始めたのです。そのほかにも様々なマジックを見せてくれますが、『神秘の指先』、プロと言っていいレベルなのでは無いでしょうか。最近で は、マジックをしながら彼が頷くので、多少のコミュニケーションが取れるようになりました」

「プロ並みの腕を持つ」謎の男の存在は、イギリス全国メディアによって「マジック・マン」と報じられ、話題を呼んだ。男の担当、アル・コーラン医師はヨーロッパ中のマジック愛好家・プロ団体、EU行方不明者捜索機関に連絡を取り、情報の提供を求めた。また、コーラン氏は今 月1日にEU加盟各国で放映されるTVニュースに出演し、情報の提供を呼びかけた。そうして世界中に「マジック・マン」が知れると、約1000件の問い合 わせ・情報がもたらされたと言う。

「有力な情報ばかりとは言えません。ですが、少ない可能性を捨ててはなりません。事実、非常に信憑性のある情報があり、彼は北欧の出身のようです。その他にもたくさんの有益情報がもたらされています」

現在、彼はロンドン衛生病院に入院している。先日、医師らが彼に鳩を見せたところ、黙って袖に入れようとしたと言う。また、シルクのハンカチを持たせれば、なぜか自分の親指を引っ張り、まるで外そうとしているような行為を繰り返しているとの事。意味不明に見えるが、マジシャンと断定できる行為とする指摘がある。

閉ざされた心

彼は、常に怯えたような表情のまま。また、一切話すことをせず、無言の生活が2ヶ月以上経過している。

これについて、精神面から彼を診察したジュリアナ・チェン医師はこう語る。「彼が発見されたとき、衣服のラベルは全て剥ぎ取られていました。また、『着替える』と言う行為を拒んだようです。以上のことから、精神的な面から見れば『自 閉症』という可能性が考えられます。ラベルを剥がすといった行為や、ある種の芸術に突出した感性を示すことがあるからです。」

また、どうやら彼が「記憶を失っている」らしいことについては、「こればかりは、断定が難しいです。記憶喪失の中でも、自らに関する事例を忘れるものを『全生活史健忘症』と言います。『マジック・マン』の生活を見る限り 『記憶を失った演技』とは思えず、これである可能性は高いでしょう。こうしたものは、精神的に大きなショックを受けたときに発症しやすく、同時に回復のメ カニズムも確立されていません」

1000件もの情報の中で、信憑性のあるものは極わずか。家族からの直接の問い合わせと見られるものはまだなく、警察は事件、事故に巻き込まれた可能性があると見て捜査を開始している。

入院している彼は、今後治療を続けていく予定。

2005.5.3 有力な情報1 種明かしマジシャンの末路?

今月3日、アメリカから寄せられた情報によれば、彼は数年前から世界中で「マジック種明かし興行」を行っている「マスク・マジシャン」なのではないか、とのこと。種を明かし、ルールを守らないマスク・マジシャンは「嫌われ者」だったと言う。そこで、あるマジシャンが暗殺を企てたものの「何とか逃げ出したのが『マジック・マン』なのでは」と言う説。

情報提供者によれば「暗殺目的で海に突き落とされたが、泳いで助かったのではないか」。

2005.5.10 有力な情報2 脱出芸の途中で事故に巻き込まれた可能性

10日のイギリスからの情報によれば、男が発見される3日前、リコーマン河上流で脱出マジックの途中で行方不明になったマジシャンがいるとのこと。両手両足を縛られた後、木箱に詰められリコーマン河へ落とされた「デビッド・ブレイン」と言うアメリカ人マジシャンが、「10分以内に脱出する」はずがそのまま行方不明。
リコーマン河は、「マジック・マン」が発見されたハンクオーク海岸に流れ込んでいる。

2005.5.11 有力な情報1について

『「マスク・マジシャン」ではないか』との説について、11日、マスクマジシャン本人を名乗るヴァレンチノなる男性が声明を発表。「私は、アメリカで生存している。『マジック・マン』ではない」とのこと。

2005.5.18 有力な情報2について

「行方不明になった『デビッド・ブレイン』ではないか」の説について。ブレインは肌の色が褐色・またはブラックで白人のマジック・マンとは違うことが判明した。しかし、ブレイン本人は不明のまま。

また、以前の「公演中に”消失”したマジシャン」との関連性は不明。こちらも、カッパーは発見されていない。

2005.5.20 新たな1枚

20日、男は新たに1枚の絵を描いた。

magic02

マジックの専門家が鑑定したところ、これはアメリカ・ハリウッドのマジック専門クラブ「マジック・キャッスル」の外観とみられる。会員制高級クラブ(マジック・キャッスル)の絵を描いたことで、「『マジック・マン』は名の知れたマジシャン」説が有力となった。今後、様々なマジック道具を手渡す治療も行われると言う。

情報の提供は、ロンドン衛生病院またはイギリス警察まで。