愛・地球博 日本初登場の不咲花が人気


愛・地球博の「自然科学館」で展示されている不咲花(さかずはな)が、人気を呼んでいる。世界に5つしかない鉢の一つ、しかも日本で初めて公開されたとあって、同館の入場者のほぼ全員がこれを目当てというのも頷ける。この、不咲花とは、どのような植物なのだろうか。

不咲花の特徴は、その名前どおり「咲かない」ことにある。普通の花は、受粉のために蕾をつけて美しい花を咲かせるが、この不咲花は蕾を開かないままいるのだ。学名をディペアイッポフロウェル(ラテン語で光を知らない花、の意)といい、コスモスの一種である原産はエジプトと言われ、3000年前のパピルス文書にその名が登場するという。また、寿命が大変長く、100年以上だとされる。

しかし、「不咲花」=「咲かない花」という命名は間違いで、実は、この蕾は咲かないまま枯れるという実証は無い。不咲花が発見されてから誰も、咲いたところを見たことが無いのが正解である。

この奇妙な植物は、1894年にエジプトの王墓でイギリス人考古学者が埋葬品として種子を発見したことで姿を現した。それまで、古文書から存在は知られていたが、姿を確かめたものはいなかった。

1897年8月にこの種子全7粒のうち5つが発芽に成功し、その3ヶ月後に蕾をつけたと記録されている。だが、それから108年間、5つの鉢植えの不咲花のすべてが開花しないまま、枯れないままなのである。展示されている実物を見る限り、非常にみずみずしいままで、現在も「生きている」ことが実感できる。100年以上前に発芽したとは、驚きの一言に尽きる。

不咲花は、古代エジプトで「永遠に花が咲かない」=「永遠に枯れない」ことから、王の栄光と国の繁栄を象徴するとされ、王墓に添えられたと考えられている。 つまり3000年前もこの植物の花を見たものはいないのである。そして、いつ枯れるかと言った記録も残されていない。不咲花はその後、エジプトから姿を消して事実上絶滅している。つまり、現在この世にはたった5つしか残っていないことになる。

多くの植物学者がその解明に挑んだが、未だ満足な答えは見つかっていない。しかし、世界に5つしかないため、蕾を切り開くという作業も行われておらず手出しできないというのが実情。分類上、コスモスに近いとしかわかっていない。

だから、誰も咲かないとは言い切れないのだ。いつ咲くのか、本当に咲くのか、そしていつ枯れるのか。それは誰にもわからないのである。蕾は今日も蕾のままであった。

蕾が開くときは、どんな瞬間なのだろうか。