72年間小説を新聞連載した作家がギネス登録
南アフリカで、72年間に渡って新聞に小説を連載していた男性がこのほど、英ギネス社により「世界で最も長い間同じ新聞に同じ小説を連載した作家」として公認ギネス記録になった。
今回この「偉業」を達成したのは、南アフリカ・ケープタウン在住のアラン・ミンチー・ジュニア氏(88)。ミンチー氏は、地元新聞紙「ケープタウンズ・トゥデイ紙」において、1932年からSF小説『遥か遠く』を連載し続けた。
1931年、15歳でイギリスの文学賞を受賞しデビューしたミンチー氏は、故郷・南アフリカで新聞連載を開始。社会風刺やアクション、サスペンスを取り入 れた作風に加えて、恋愛、歴史、SFにミステリなどオールマイティーにベストセラーを多く発表し、人気作家となった。
代表作は『荒野009−237号』(1931年)、『コーンポタージュ』(1942年)、『金庫と蝶番』(1969年)など多数。作品の多くが映画化されており、昨年ハリウッドでリメイクされ た映画『キャシー・ジェーンと不愉快な仲間たち』(ナタリー・ポートガイ主演)も、ミンチー氏が原作者として知られる。
今回記録の達成作 品となった『遥か遠く』は、連載開始の1932年の70年後が舞台で、1ヶ月1話完結形式のSF小説。毎日400文字程度が掲載され、アメリカの新聞記者デヴィッドが世界情勢の変化とともに毎回大騒動に巻き込まれる展開。世界情勢が不安定だった当時、リアルに未来を描いたこの作品は大人気で迎えられた。
一 時期、「ケープタウン・トゥディ紙はミンチーの小説人気で売れている」とまで言われたという。既に100巻が書籍化されており、累計2500万部を超えてい る。2002年には、70年前に書かれた作中の未来の世界情勢が、あまりに現代と酷似していることも大きな話題を呼んだ。
2002年に は、小説の初期時代設定を通り越し、「作者も知らない未知の領域」(ミンチー氏談)へ突入。それでも「書くことについては全く問題なかった」と言うとお り、連載はなんと1度も中断されること無く続いている。その間、章は781に達し、担当編集者は49人代わったという。
しかし、今回の記録は途中には「アイディアが浮かばず」苦肉の策としてたった5文字しか掲載されなかった日(1954年12月12日など)もあった。
ミンチー氏は「この小説は、私とともに成長しました。成長の証に記録がついたことは、大変光栄です」と喜びを語った。現在ミンチー氏は第782章目を執筆中。最終回の予定は今のところ無いとのことで、「私より後で完成するでしょう」と、意味深な発言をするに留まった。
『遥か遠く』は全世界の書店で購入可能。
参考記録:「世界で最も売れた本」は聖書。
「世界で最も長い間同じ小説を同じ雑誌に連載した作家」は、日本の植木瑞樹氏の32年。
「世界で最も抗議が殺到した作家」はイギリスのダニエル・ポール氏の30919件(2004年現在)。