「日本のサービス残業」記憶遺産への申請取り下げ
日本勤労評議会は5日、世界記憶遺産への登録を目指してきた「日本のサービス残業」について、申請取り下げを検討していることを明らかにした。登録に必要な資料が集められなかったことが要因としている。
「日本のサービス残業」は、日本の経済発展を支えた「無報酬でも会社に奉仕する美徳」を後世に残すことが目的。ブラック企業批判を恐れた企業がサービス残業を禁止する傾向があることを受け、「日本の伝統文化を守る」(同会)ために2016年の登録を目指していた。
同会の活動は経営者を中心に支持を集め、登録を求める署名は5万人に達した。約3000人分の署名を提出したというある経営者は、「我が社の社員に1人あたり50人分の署名を集めるようノルマを課した。親戚や知人にも声掛けしてくれたようで、愛社精神に感激した」と話す。
だが、記憶遺産の選考委員会へ提出する、退勤後の勤務実態を示す資料集めに難航。タイムカードや出勤簿などサービス残業を証明する資料がすべて処分されていたため、一切の証拠が見つからないのだという。
物的証拠が不十分なことを受け、同会では申請を取り下げる方針。2017年の再申請を視野にいれ、サービス残業の実態を徹底的に調査して報告書を作成するという。
ブラック企業を取り締まる労働監督委員会の関係者は「我々にとって好都合な展開で、まずは調査報告書を待ちたい」と話している。