アロー賞発表 日本人は村雨梅雨氏、大野ユタカ氏


アメリカ映画産業で、アカデミー賞と双璧をなすと言われる「アロー賞」。アカデミー賞のように会員による投票ではなく、各映画館に設置された投票箱に身分証明書を提示すれば、1人1回限りで投票が可能なことが大きな特徴で、今年で6回目を迎える。

今年は、現地時間26日(日本時間27日)、ロサンゼルス・ハリウッドのダコタ・フレンディ・シアターで授賞式が行われた。「レッド・ホット・ママ」が最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞で3冠受賞し、「KAME-HAME-HA」も同じく3冠の栄光。

「最優秀傑作賞」の有力候補だった「AMERICAN LIFE」、「ブレア・ブッシュ・プロジェクト」は受賞を逃し、同賞は受賞なし。

日本人としては、「シュリンプ・ココナツ」で熱演を披露した村雨梅雨氏が日本人3人目の助演男優賞、大野ユタカ氏が「冷ゆ夢の夏」で短編監督賞を受賞した。過去3度ノミネートされたタカ・ワタナベ氏は、今回も主演男優賞を逃した。

司会者の「Baiu MURASAME!」、「Yutaka OONO !」という声が響くと、盛大な拍手をもって迎えられた。2人のサムライが、世界を「斬った」決定的瞬間である。スピーチでは、村雨氏が「ただ嬉しい。実家にはノミネートすら伝えていなかったので驚くと思う。それ以前に、生きていることすら伝えてなかったかな」と語り笑いを誘った。

この賞が企画されたのは7年前。大手出版社・Friends&Picks社の編集者だったジェイミー・スタイン氏がぞっこんの映画「明日は我が身」(’98 チェン・ユータン監督)が、一つのタイトルにも輝かなかったことがきっかけ。当時、「明日は~」は年間2位の興行成績を挙げたものの、「内容が破天荒過ぎる」「アカデミー賞の威厳を損なう」「教養的に良くない」といった意見が多数を占めてノミネートすらされなかった。

これが気に喰わなかったスタイン氏は「面白い映画は評されるべき」の理念でアロー賞を企画。保守的になりつつあったアカデミー賞に対抗する一大イベントとして、翌99年に300の投票箱を設置して第1回を開催した。

映画芸術アカデミー会員による投票が「安定しすぎて」退屈だった市民や、会員になれなかった悔しい思いの俳優たちから大きな反響を呼んだアロー賞は全米にテレビ中継され、現在でも高視聴率を維持している。

ノミネートされているものにはすべて自由に投票でき、またノミネートされていなくても「ノミネート希望票」が一定票を超えると、正式にノミネートされるというシステムの単純さも受けの理由だろう。「映画を見終わって、感じた票をすぐに投票できることが手軽で受けている。『観客の意思を提示し、映画界の発展を望む』意味もある」と発案者のスタイン氏は自画自賛。

今年は、過去最大規模の全国3200箇所の映画館で投票が行われ、およそ45万票が集まった。そして、例年通りアカデミー賞の前日にロサンゼルスで行われた授賞式の中継視聴率は51%と関心の高さが伺える。アロー賞は、独特の投票形式から膨大な数の作品がノミネートされることが特徴。今年も、国内外から2241作品がノミネートした。

会 場には、一流と言われるスターも登場するのが慣例で、今回もジョージ・ビートやキャサリン・レイノルド、タカ・ワタナベらノミネート関係者らが出席。ま た、世界中からのファンに加え、小規模な単館上映作品のノミネート関係者らも出席し、「世界中の俳優集結」という「珍光景」が見られるのも大きな魅力だ。

この賞から羽ばたくケースも多く、昨年の興行成績2位に輝いた「カイロ発の客船に」で主演したデニー・ブラックストーンもアロー賞で日の目を浴びた俳優である。どんな大金をかけた作品も、低資金の自主制作映画も、同じ目線で評価されるこの賞は大きな可能性を秘めていると言えるだろう。

「『賞を取ったからいい映画』ではないんです。いい映画だから、アロー賞は賞を与えて、その映画を記録に残しておくのですよ」とスタイン氏は言う。

受賞関係者らの会見は、後日行われる。なお、得票数はなぜか明らかにされないのも慣例である。投票時に添えられたコメントは、1週間後のアロー賞特番で紹介される。

最優秀傑作賞:該当なし
最優秀作品賞:『レッド・ホット・ママ』
監督賞:ジェイコブ・ジュネーブ 『レッド・ホット・ママ』
主演男優賞:トニー・マッケンロー 『レッド・ホット・ママ』
助演男優賞:村雨梅雨 『シュリンプ・ココナツ』
主演女優賞:キャサリン・クロウ 『KAME-HAME-HA』
助演女優賞:キャサリン・ウォーカー 『NewYork警察24時』
作曲賞:『KAME-HAME-HA』
編集賞:『畑で遊んだ小鳥』
撮影賞:『KAME-HAME-HA』
美術賞:『パリ-横浜殺人旅情 大西洋に消えた伯爵夫人』
脚色賞:『ム・ラ・パン』
録音賞:『ソウルの雨音』
脚本賞:『AMERICAN LIFE』
長編アニメーション賞:『Do-Ra-E-Moon』
メイクアップ賞:『宇宙大戦争 ドーバー海峡編』
衣装デザイン賞:『107回目の接触』
長編ドキュメンタリー賞:『カリマンタンは今』
短編アニメーション賞:『電交熱烈歓迎的是自己的人生』(原題)
実写ドキュメンタリー賞:『Nyzwhezh』(原題)
視覚効果賞:『ブレア・ブッシュ・プロジェクト』
音響編集賞:『くしゃみ100連発』
ドキュメンタリー賞:『フォーテル・レゼェルベ?』(原題)
歌曲賞:『ブログってなんだろう ドイツ文化省教養ドラマ』
外国語映画賞:『乾いた青、あなたの色』(イタリア)
短編作品賞:『鍵を開けるには闇が必要』
短編監督賞:大野ユタカ 『冷ゆ夢の夏』
短編主演男優賞:トニー・バーガー 『孔雀は見られる』
短編主演女優賞:ジェシカ・ウィンスレット 『わたしはね、とってもハッピー』
短編編集賞:『屋台探偵ユーカさんは事件がお好きPart13 奇妙な依頼人』