「砂嵐」を2年ぶりに地上波放送 今も根強い人気
いま「砂嵐」が熱い。初のエジプト出身力士として話題の大砂嵐関のことではない。「ザーッ」という音でおなじみ、白と黒がテレビ画面で点滅する砂嵐のことだ。2011年のアナログ放送終了後は見ることができなかったが、今年に入って「もう一度見たい」との声が急増。2年ぶりに地上波放送を決定するテレビ局も出てきた。
砂嵐はアナログ放送の送受信が無い状態で起こる「ノイズ現象」のこと。ホラーやサスペンス作品でも存在感を発揮し、映画『ドラえもん のび太とブリキのラビリンス』で寝ぼけたのび太が砂嵐状態のテレビ画面に目をやる冒頭場面は「過去100年間で最も美しい砂嵐シーン」として有名だ。また、一説には「ザーッ」という音が母親の胎内にいるときの音に似ており、幼児に見せると泣きやむなどリラクゼーション効果を指摘する研究もある。
数年前までは深夜にテレビをつけると当たり前に目にした光景だったが、ノイズの 発生しない地上デジタル放送の開始とともに姿を消した。長らく視聴できない状態が続いていたが、今年初めに人気雑誌の「もう一度見たい懐かし番組アンケート」で「特ホウ王国」や「笑う犬」を抑えて砂嵐が1位に輝いた。これをきっかけに、デジタル放送でも砂嵐を放送するよう求める声が全国に拡大していく。
2歳のときに砂嵐を見て虜になったという男性(27)は、「ここ数年は砂嵐マニアにとって厳しい時代だった。砂嵐を録画したDVDを仲間内で密かに貸し借りしていたが、悪いことをしていないのになんとなく闇取引のようで気が引けて辛かった」と話す。
こうした状況を受け、フジヤマテレビでは低迷する視聴率へのテコ入れ企画として12月31日のゴールデンタイムに砂嵐を1時間生放送することを決めた。前述のマニアの男性は歓迎しつつも、「砂嵐は仕事でへとへとになって帰ってきたとき、真っ暗な部屋で何も考えず一人でぼーっとみるのが醍醐味。ゴールデンじゃ魅力半減ですね。まあ見ますけど」と苦笑する。
また、根強いファンの声が実を結び、いつでも好きな時に砂嵐を視聴できるよう過去の名作砂嵐を35パターン集めた「THE砂嵐ゴールデンベスト」がポニーオニオンから来年初めにも発売される。現代人の心のオアシスとして見直され始めた砂嵐の「旋風」は、まだまだ止みそうにない。