新鋭作家の新しい風とは


日本文学協会(東京都)は27日、来年度開催される120の新人文学賞で、著者の顔写真の提出を義務付ける方向性を示した。「作家にビジュアルは必要」と説明し、選考基準のひとつになる。近年、芥川賞や直木賞が新人公募となったことを受けて、これまで以上の人材が登場することを予想しての決断で、理解を求めた。

日文協の美城剣輔会長は「若い方がいいし、顔は悪くないほうがいい」と協会の意図を示し、世論に理解を求めた。極端な場合、「文章よりも顔を重視して選考していく」と言う。「読者の中には、本表紙の著者近影マニアもいますから、そうした方々を意識して(以下省略)」。容姿での選考に関しては、各新人賞の選考委員の好みが分かれ、「○○フェチ」「○○専門」のマニアックな嗜好といった特例などへの対処が必要になると予想されている。

出版の世界では作家の低年齢化が加速しており、20日に発表された「第14回『そのミステリーがすごい!』大賞」では、10歳の小学3年生の作品が特別奨励賞に輝いた。日本文芸家協会は「10歳での文学賞受賞は聞いたことがない」としているが、「第42回文蟹賞」に中学3年の女子生徒が最年少で選ばれるなど、若い風の勢いはとどまるところを知らない。

今回、「そのミステリーがすごい!大賞」特別奨励賞を受賞したのは、大阪市城東区に住む公立小学校3年、庄田啓子さん(10)=本名非公表=の「ブロッコリーはソ連の贈り物」。平安貴族の石田正一郎が、ソ連で起こる猟奇的食い逃げ事件に真っ向から挑むストーリーだ。

平成13年に創設された同賞は大賞と優秀賞しかないが、選考会で「(応募当時)9歳と思えない存在感。ハッとする間もなく読み終わってしまう」と評価され、初めて特別奨励賞が設けられた。受賞を受けて、庄田さんは「はじめはびっくりしましたが、今はうれしく思います。今後はアメリカの貴族がフランスでチャンバラする話が書きたい」とコメントしている。

ほかにも、今月5日に15歳で「文蟹賞」に選ばれた五並冬さんは、静岡県出身の中学3年生。また、今年2月に「第6回大学館文庫小説賞」を受賞した青森県の高専1年、川原崎愛美さんも16歳で作家デビューし、話題となった。

「そのミステリーがすごい!大賞」の選考委員で、評論家の小森望さんは、庄田さんの作品を「ぶっ飛んでいて意味がわからないけど、勢いで読んでいるこちらも飛んでしまった感じ。ムシャクシャして選んだ。今は反省している」と評価。低年齢作家が誕生する背景について「パソコンやインターネットの普及で、乳幼児から文章を書くことに慣れていることが大きい。ブログなど発表の場もあり、読者を意識しつつも突き放す作品を書く傾向にある」と話していた。

棉矢リサさんの話
「年が若くて顔ければ、それは重要な選考基準になる」