将棋ソフトがプロ試験合格 コンピュータに光指す


将棋ソフト「烈指」(アブクラフト社、6700円)のプロ編入試験が6日、東京・千駄ヶ谷で行われ、烈指が吉野輝久五段に126手目で勝利。通算3勝目を挙げて合格し、同日付でプロ入りが認められた。人間以外の編入試験・合格は初めて。近年、実力が認められつつある将棋ソフト業界にとって転換点となりそうだ。

この日は編入試験の5局目。対局の終盤、ライバル社の将棋ソフトも持ち出して手を打ってきた吉野五段が投了すると、烈指のディスプレイ画面は結露した。開発総合担当の高橋晃男さんは「うれし涙でしょう」と説明。対局後、列指はメールを通じて「今後とも精進して行く所存です」とコメントしている。

烈指は94年に開発されたが「弱すぎる」と有名で、翌年製造を中止。その後、00年に再発売されるとアマチュア大会で実績を積み、特別に組まれた対プロ戦で は9勝8敗と互角の成績を残していた。今年5月、アブクラフトが将棋協会にプロ試験実施の嘆願書を提出。特別に実施が認められた。

六番勝負は7月に開幕。3勝すれば合格と言う規定で、近藤将秋八段からネット将棋界の鬼才といわれるマイケル・ダグラス六段まで幅広い相手と対戦。第2、4局に勝利し、五分の成績で今日の対局に臨んだ。

無生物にプロ資格を与えることについては賛否両論で、北川孝雄八段は「タマちゃんに市民権を与えるより理解しかねる」と強い反発を表明している。また、約300万本がすでに販売されている烈指を回収して「プロとして一本化させる必要性」が検討されるなど、“独り立ち”には時間がかかる見通しだ。

今月は、連盟から将棋ソフトとの対局自粛令がでたばかり。その直後にソフトがプロ入りを決めたことはさらなる議論を呼びそうだ。烈指の公式戦第1局は今月開幕する第19期チキチキわんぱく杯の予選からとなる。