アリソン諸島沖で沈没船を発見


イギリスの、民間沈没船調査隊”大洋は呼んでいる会”は12日、南太平洋アリソン諸島・カルバ島沖で17世紀のものと見られるイギリスの沈没船を発見したと発表した。船は商船「モンタール号」と見られる。

同調査隊はイギリスの「沈没船愛好家」らが結成した団体で、世界中の海で沈没船調査を行っている。今年5月、有数の「沈没船地帯」と呼ばれる南ナレー シャス共和国沖にターゲットを絞り、古文書を資料に地域を絞った後に調査に乗り出した。

イギリスの古い商船出航記録文書には「『モンタール号』…サウス ポール社所有。ジャン・ジャック・モーリア船長。船員117名。先住民の民族品およびイギリス金貨積載。1621年9月13日、アリソン諸島レイマ島から 出航したが、カルバ島沖で”悪魔の変流”により転覆、沈没。船はおろか船員・積載物行方不明」と記されていると言う。今回発見されたものは、「資料に残っている沈没地点とも合致し、外観も酷似している。モンタール号である可能性は非常に高い」としている。

同調査隊のハリー・カーペンターさ ん(66)は、「私は、会社の社長をやってます。今回の調査は私財を投じましたが、その価値は十分にあったと言えるでしょう」と満足げ。会長のトニー・ガ ルシアさん(60)も、「今回の成果は、学術的にも素晴らしいのではと思います。我々の研究が無駄でなかった何よりの証です」と胸を張った。

同船には、現在の価値でも100億円に近いとされる「文化財」が積載されており、その点も注目されている。今後の予定は、一時作業を中断。詳細な調査を行い、来年3月に引き上げを行うと言う。

今回の発見の学術的意味合いについて、アメリカ・セントカール大学のジム・ウィルソン教授(71)は、「世界における当時のイギリス海洋戦略や、カポル族の生活、あの海域の引き起こす異常性の解明という意味においても興味深い。中に眠っている財宝の価値も、美術的に素晴らしいものだ」と評価する。

【アリソン諸島】
南ナレーシャス共和国に属する、南太平洋のほぼ中心に位置するおよそ大小43からなる島々。古くから原住民族のカポル族が王制国家を形成していた。1561年にイギリス人探検家マーク・フォード・アリソンが発見したとされる。

豊かな自然とカポル族の高い芸術文化が存在し、特に民芸品は現在でも美術品として高い評価を受けている。1570年にイギリスが植民地化、以降は南太平洋におけるイギリスの重要な商業拠点となったが、同時に約200年続いたとされるカポル王朝が滅亡した。

その後、1893年に近隣のモラル諸島、ナレーシャス諸島らと南ナレーシャス共和国として独立。この地域の海域には「悪魔の変流」と呼ばれる特異な強風と海流が入り組む箇所があり、昔から沈没船が後を絶たない。